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この記事の概要
一棟投資マンション運用の基本は、まめなメンテナンスや専有部・共用部の魅力付けによって毎月の賃料を維持・向上させつつ、空室期間を極力減らすことで、賃料収入を向上させていくことです。そうした取り組みは、最終的な物件の売却価格の向上にもつながっていきます。不動産投資は売却して初めて最終的な利益が確定するため、出口戦略が重要になっていきます。
では、一棟投資マンションの“売り時”はいつなのでしょう。これは投資状況に応じたタイミングのほか、投資家本人の事情など、さまざまな要因に基づきます。売却の大きなタイミングについては、以下のように整理できます。
(表1)一棟投資マンションの売却のタイミング例
「投資要因」による売却とは、以下の2つのタイミングが考えられます。1つ目は、保有する一棟投資マンションが一定の利益を生み出し、目標利益額が確定した際や減価償却期間の終了など、投資期間中における大きな節目をきっかけとしたタイミングです。2つ目は、利益率が低下し、低稼働の物件や老朽化した物件となり見切りとなるタイミングです。
「社会的要因」による売却とは、急いで売却する必要はないものの、保有する物件の市場価値が高まり、通常の相場以上に売却価格が見込めそうな時期に応じて売却することです。賃貸需要は日本全国一律でなく、エリアや都市によって変動率が上下します。近隣での大型ショッピングセンターの開業、大学の新設、新駅の建設など需要が一気に上がる時を狙って上手に売却すると、通常の投資環境以上のリターンを得られる場合があります。
一番重要なのが、「投資家の本人事情」による売却です。不動産投資によって得られる資産をいかに大きなものにするかだけでなく、いかに将来を見据えてスムーズに承継していくかも大切だからです。ご本人やご家族の年齢、ライフステージなどを考慮して、不動産投資計画に加えて、事業継承者にどうバトンタッチしていくか、マクロの視点を持つことが重要です。
さて、賃貸不動産投資市場において、既存の一棟マンションはどのように評価されているのでしょうか。収益物件の価格算出方法としては、年間賃料収入と期待する利回りを基に算定する「収益還元法」をはじめ、路線価などの公的な公示価格に基づく「原価積上法」、近隣エリアの類似物件の成約事例に基づく「取引事例比較法」などがあります。
(表2)一棟マンションの売却額に関する要因例
ロケーションや築年数はコントロールできませんが、メンテナンスやリフォームなどの行為は運用方法によって価値向上を投資家自身がコントロールできます。賃貸不動産の投資家であれば、各戸の賃料を維持・向上させるための取り組みは必須業務です。その成果はインカムゲインだけでなく、将来売却時のキャピタルゲインの向上にもつながっていくわけです。
ここで将来の売却に当たっての大まかな流れを説明します。売却にあたり、不動産仲介業者などに「○億○千万円で買ってくれ」と言っても、それが通ることは稀といえます。周辺エリアの相場はあっても売主・買主の需給バランスなどがあり、買主がすぐに見つかるわけではないからです。買い取り業者、投資事業者などが直接買い付けるケースもありますが、売却期間が短くなるメリットがある反面、買い取り価格は相場よりも低くなりがちです。不動産仲介業者を通じて新たな買い主を見つける方法が一般的といえます。
以下は、一棟投資マンションを売却するに当たっての大きな手順です。
(表3)一棟投資マンションの売却の流れ
流れとしては、まずご自身で希望売却価格を仮設定し、次いで業者の査定によって、希望売却価格が妥当なものかプロに判断してもらうことになります。この査定額は「いくらで買い取る」という具体の数字でなく、「このくらいの数字でなら買い主を見つけられそう」というメドになります。
こうした市場の相場を基に売却価格を再設定した後に、不動産仲介業者と売却のための媒介契約を行い、本格的な売却活動を進めます。不動産仲介業者は買主を見つけ、売買契約の締結を進めます。ただし、買主側は物件価格の値引きなど要望を付けてくることもありますから、そこを売主の意向に沿ってどうコントロールできるかが不動産仲介業者の腕の見せ所となります。つまり、多くの見込客を確保しつつ、スピーディーかつ高額に購入してもらえる買主を見つけられる、実力のある不動産仲介業者が重要になります。買い取り業者への依頼はスピーディーですが、前述の通り買い取り価格が相当低くなるため、急な現金調達が必要になった時など緊急対応的なものと割り切るべきでしょう。
保有する物件の売却によって投資マンションの最終損益が確定するわけですから、賃貸投資期間中であっても、常に売り時を意識しておき、出口戦略を考えておくことが、トータルでの収益性を高め、資産価値の向上につながっていきます。
日経BPコンサルティング
※ 本コンテンツは、不動産購入および不動産売却をご検討頂く際の考え方の一例です。
※ 2023年11月24日本編公開時の情報に基づき作成しております。情報更新により本編の内容が変更となる場合がございます。
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